アリゾナで訓練を受ける日本のパイロットの卵達(2)

昨年8月号でアリゾナ州のファルコン飛行場で日本航空が行っているパイロット訓練の様子を掲載した。同様に全日空(ANA) もアリゾナでパイロット訓練をしている。今月は、この訓練所を訪ねてみた

 

フェニックス・グッドイヤー空港

フェニックス市西側郊外のグッドイヤー市にある空港。第二次世界大戦時に米海軍の航空施設として建設された。1968年に閉鎖されたが、その後、フェニックス市がスカイハーバー空港の予備空港として購入した。ここでは、航空便の運航は行われていないが、航空機メンテナンスの企業と商用パイロット訓練施設がある。

 

ルフトハンザ航空

 

ドイツのケルンに本拠を置くドイツ最大の航空会社。日本の全日空と事業提携をしている。このルフトハンザがフェニックス・グッドイヤー空港にパイロット訓練所を設置している。訓練の本拠点は、ドイツのブレーメンにあり、多数のパイロットの卵たちが訓練を受けている。また、好天に恵まれ飛行訓練に適したアリゾナにも訓練所を設けた。

   
全日空のパイロット訓練
1989年に全日空は、ルフトハンザのパイロット訓練所に訓練委託をし、多くの訓練生がアリゾナに送られてきた。ここでは、AN1からAN18までの18のコースが設けられ、訓練を受けた約300名のパイロットが、現在全日空のパイロットとして活躍している。
1992年に全日空は、カリフォルニア州のベーカーズフィールドに自社養成パイロットの訓練所を開設した。ベーカーズフィールド訓練所では、22年の間、A1からA74までの74のコースで訓練を実施してきた。しかし、ベーカーズフィールド訓練所は、2014年に閉鎖の運びとなる。
   
再びアリゾナに
ベーカーズフィールドでの訓練所閉鎖の背景には、新たな訓練システムであるMPLの導入によるエアラインパイロットに特化したハイレベルな訓練と時間短縮を目指したことがある。MPLとは、Multi-crew Pilot Licenseのことで、二人乗り航空機の操縦士に特化したライセンスだ。これは、2006年に国際民間航空機関(ICAO)で規定され、日本でも2011年に法制化、翌年2012年に施行された。
この流れから全日空は、理想的な訓練体系への移行を模索し、このMPL導入を検討し、2014年末から開始することを決定した。全日空とのジョイントベンチャー提携相手であるルフトハンザ航空は、パイロット訓練を行っているLAT (Lufthansa Aviation Training)社を持っている。LATでは、MPL訓練を2009年から行っている実績がある。そこで、過去に委託していた歴史もあり、全日空は、この会社との提携を選んだ。LATは、ルフトハンザ航空の子会社で、ルフトハンザを始め、世界の多くの航空会社から航空乗務員のトレーニングや客室乗務員のサービストレーニングを委託されている。
その訓練施設の一つがアリゾナのグッドイヤー空港にあり、全日空は、2015年からパイロットの卵たちをアリゾナに送ってきている。
   
訓練の過程
全日空のパイロット訓練には、4つの段階が設けられている。
1)コア・フェイズ(Core Phase): ドイツのブレーメンで学科を学ぶ座学研修を6ヶ月行い、その後、アリゾナで5ヶ月を実機とシュミレーター訓練をする。現在12名が訓練中。
2)ベーシック・フェイズ(Basic Phase):ドイツのブレーメンで学科とシミュレーター及び実機を6ヶ月行う。セスナ社サイテーション CJ1+という小型JETのシミュレーターと実機で行うのも特徴。
3)インターミディエイト・フェイズ(Intermediate Phase):東京都大田区東麹谷の訓練センターにて、B777のシミュレーターで行う。
4)アドバンスド・フェイズ(Advanced Phase):東京都大田区東麹谷の訓練センターと中部国際空港にてB777の実機および上記訓練センターにてB777のシミュレーターで行う。
以上の過程を経て、すでに28名がパイロットとして活躍している。
 
左から前川修也さん、桐生聡太さん、アヴーヴル洋さん、松本優一さん。アヴーヴルさんは、スウェーデン人の父親と日本人の母親の間で生まれた。
松本さんは、訓練推進部のマネージャーを務め、米国在住教官で、B767の機長。
 
訓練用のプロペラ機、Beechcraft社F33、愛称ボナンザ(Bonanza)に乗る前川修也さん、桐生聡太さん。冷房がないので、夏場の飛行訓練は大変。